マイ・ホーム(仮)
2025 1/18-3/8  札幌芸術の森美術館​​​​​​​
ひとつの絵についての制作ノート

この絵は、祖母がデイサービスで描いてきた果物や花などの静物画を1ヶ月ほどかけて模写して作った。
対になる香水を使った画用紙の作品は、その制作のときの体験と感覚から作った。

祖母は元々絵を描くことやものを作ることが好きで、私は子どもの頃たくさん一緒に遊んでもらった。
認知症になってから、記憶や時間や空間の捉え方が変わっているように思える彼女と
一緒に過ごして 話して、絵を描いたり 描かれた絵をなぞったり眺めたりする。
続けていると、彼女がみている世界のかたちの一端に触れられるように感じる瞬間がある。

引いている途中で何を描いていたか見失ってよろめいた線、
むかし祖母が描いていた絵にあった、手癖はそのままある。
話しながら 子どもになる、祖母でなかった頃の彼女になる

忙しくして 自分がみている世界の普通を押し付けて
彼女に起こっていることや感情の機微を無視していたと思う。
このことに限らず どれ程たくさんのことをそうして無視してきただろう

模写をはじめて1ヶ月ほど経ったある夜、
いつものように制作場に向かって歩いている途中で つよい花の香りが漂ってきて、みると道の傍に大きな百合の花が咲いていた。
絵の続きに着手して、模写している祖母の絵の中に出てくる 何かわからなかった線が百合であることに初めて気がついた。

何度も繰り返し描く中で、線や色は変換され続けて、次第に彼女と私の線が混ざって違うかたちがあらわれる。
なにかがあらわれたり、消えたりを繰り返す。

これは言葉で語ることのできるひとつのエピソードだけど、
絵を描いているとき、いろんなかたちの そうした無数の明滅のようなものがやってくる

マイ・ホーム(仮) 
札幌芸術の森美術館
2025年1月18日(土曜日)~3月9日(日曜日)
午前9時45分~午後5時(入場は閉館の30分前まで)月曜休館(2月24日は開館し、翌2月25日は休館)
一般1,000(800)円、高校・大学生600(480)円、小・中学生300(240)円  
◉開催概要
ホーム(home)には、住宅、家庭、故郷、発祥地、本拠地などの意味があります。本来あるべき場所、 頼りとなるものというニュアンスを含む言葉です。
昨今では、パンデミック、地域の過疎化、都市開発、移民問題、民族紛争など、ホームを揺るがしかねない出来事が相次いでいます。物質的もしくは精神的な「よすが」であるはずのホームは、思いがけず頼りなかったり、移ろいやすかったりするのかもしれません。 
本展では、暮らし、制度、ルーツ、コミュニティーなど、ホームを形づくる様々な要素をテーマとした作品を紹介します。私たちが「仮に」身を置いているだけなのかもしれない、頼りなくも愛しいマイ・ホーム。 北海道にゆかりのある作家7人の創作を通じて、そのあり方を見つめ直します。
◉出品作家
葛西由香 小林知世 武田浩志 田中マリナ 長坂有希 南阿沙美  米坂ヒデノリ
撮影: 小林知世
霧の歯
2025 3/29-4/20  Cyg art gallery
"霧の歯" 小林知世

Cyg art gallery 
(〒020-0024 岩手県盛岡市菜園1-8-15 パルクアベニュー・カワトク cube-Ⅱ B1F)

2025 3.29-4.20 11:00-18:00

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